量子ビットを15ミリケルビン(0.015K)と1ケルビンで動作させる違いはさほど大きくないように思えるかもしれませんが、量子コンピューティングにとっては大きな違いがあります。
一方、希釈冷凍機の冷却能力は、より高い温度で桁違いに優れています。量子ビットと関連する制御線は熱を発生します。各量子ビットから発生する熱は小さいものの、希釈冷凍機で冷却できる量子ビットの数に制限が生じます。この理由とその他の理由から、GQIは15ミリケルビン温度で動作できる最大サイズの量子ビットモジュールは、希釈冷凍機が供給する10~20マイクロワットの冷却能力により1500量子ビットに制限される可能性があると推定しています。1ケルビン温度では、希釈冷凍機は1000マイクロワット以上の冷却能力を持ち、数万~数十万の量子ビットを含む個々のモジュールを冷却できる可能性があります。一方、温度を上げると電子内の熱活動量が増加し、ノイズやデコヒーレンスが発生して量子計算の精度が低下します。
したがって、量子ビットの品質指標を低下させることなく1ケルビン温度で動作する方法を見つけることが重要であり、Diraqはこれを達成したと発表しました。この利点は、Diraqが使用しているスピン量子ビット技術のもう1つの利点と密接に関連しています。スピン量子ビットは、超伝導技術などの代替技術よりも桁違いに小さなダイ面積を必要とします。そのため、多数の量子ビットを小さな半導体ダイに収めることができます。同社はこのアプローチを使用して、他の企業が追求している複雑なマルチモジュールアプローチに頼ることなく、大規模な量子プロセッサを開発する予定です。同社が報告した主な指標には、最大99.85%の単一量子ビットゲート忠実度、最大98.92%の2量子ビットゲート忠実度、最大99.34%の初期化および読み出し忠実度が含まれます。これらのレベルは、誤り訂正アルゴリズムの適用が現実的になり始める領域に近づいています。
同社は、Nature誌に「1Kを超える高忠実度スピン量子ビットの動作とアルゴリズム初期化」というタイトルの技術論文を掲載しており、こちらからアクセスできます。同社はすでに開発を発表するプレスリリースをこちらで公開しており、追加の技術的詳細を記載したブログをウェブサイトにこちらに掲載しています。
2024年3月27日