コラム:米国CHIPS and Science Act。量子技術への影響は?

日付:2022-08-13 提供:Quantum Computing Report 翻訳:Hideki Hayashi

U.S. President Joseph Biden Signing the CHIPS and Science Act ]



CHIPS and Science Act は、先端研究とイノベーションの様々な面に資金を提供する法案です。米国内の半導体チップの開発・生産に527億ドル(約7兆円)、ワイヤレスサプライチェーンの革新に15億ドル(約2,000億円)、さらに1,699億ドル(約22兆円)の資金を国立科学財団(NSF)、商務省、国立標準技術研究所(NIST)、エネルギー省(DOE)に割り当て、先端研究とイノベーションの様々な面に資金を提供します。


この法案を詳しく確認しました。量子技術産業は直接的、間接的に恩恵を受けるというのが結論です。まず、直接的なメリットから紹介します。法案の2章「Division B - Research and Innovation」には、量子に関する4つのプログラムがあり、具体的な資金額が示されています。


1つ目のプログラムは「量子ネットワークインフラ」。2023年度から2027年度まで毎年1億ドル、総額5億ドルの資金が提供されます。このプログラムでは、量子ネットワークのデバイスや手法に関する研究、量子ネットワーク技術のサプライチェーンの開発、量子ネットワークに関連する先端科学計算、素粒子・原子核物理、材料科学の基礎研究、実験ツールやテストベッドの開発、さらに応用の可能性の調査などが行われる予定です。

また、量子ネットワーク、通信、センシング手法の標準化に関連する活動として、2023~2027年度に年間1,500万ドルが割り当てられています。この研究は、長距離の量子インターネットにのみ有効であるわけではなく、いくつかの量子コンピューティングメーカーは、量子プロセッサを接続し拡張するために、単一の量子データセンター内でミニ量子インターネットを使用することを予想しているので、この一部は、コンピューティングにも適用されるだろうことを指摘しておきます。


2つ目のプログラムは、「Quantum User Expansion for Science and Technology (QUEST)」と呼ばれるもの。これは、米国内に拠点を置く研究者などが、米国の量子コンピューティングリソースにアクセス可能にするものです。このプログラムでは、量子コンピュータの利用を拡大し、利用を拡大することで技術の発展に寄与するための資金を提供する予定。QUESTへの資金は、2023年度から2027年度までの5年間で1億6,500万ドル(約220億円)に設定されています。


最後の直接的なものは、「次世代量子リーダー育成パイロットプログラム」と呼ばれるもの。このプログラムは、次世代の学生や教師を対象に、量子技術の基本原理を教育するものです。このプログラムには、2023年度から2026年度にかけて800万ドル(約10億円)ほどで、合計3,200万ドル(約43億円)の資金が提供される予定です。


間接的なものとしては、「Division B - Research and Innovation」で、先進エネルギー・産業効率化技術、人工知能・機械学習、先進製造、サイバーセキュリティ、原子力、環境、バイオテクノロジー、ハイパフォーマンスコンピューティング、人工知能、6G通信、先進材料、量子情報科学など、多岐にわたる先進技術支援のための資金が提供されます。この段では、インフラ、機器、計測器、教育、基礎研究、地域技術ハブ、NSF の技術・イノベーション・パートナーシップ(TIP)のための新部門、製造拡張、サイバーセキュリティ、その他多くの活動など、多種多様な項目に資金が提供されます。ここから、量子技術に割り当てられる資金の正確な金額は明らかにされていませんが、かなりの額になるでしょう。


法案最初の「Division A - CHIPS Act of 2022」という部分は、量子技術とは直接関係ないにしても、簡単には定量化できない間接的な量子への恩恵が多くありそうです。

このセクションのメインは、米国内で古典的半導体の半導体製造施設、設備、プロセスを建設、拡張、近代化する企業に対する製造奨励金です。しかし、量子プロセッサのメーカーは、今でも制御電子機器やシミュレーションプラットフォームにFPGAやマイクロプロセッサ、GPU、アナログ部品など多くの古典半導体チップを使っているのです。そのため、政府が半導体ベンダーを支援し、そのベンダーが量子関連企業に製品を販売することに繋がっていくでしょう。また、IntelやPsiQuantumなど一部の量子企業は、古典的な半導体製造設備と互換性のある量子チッププロセスを設計するという明確な戦略を持っていることも指摘したいところです。そのため、CHIPS法の資金で半導体施設が建設またはアップグレードされる限り、この互換性戦略を追求する量子企業も恩恵を受けるのはないでしょうか。

CHIPS法からの投資で量子技術が恩恵を受けるもう一つの方法は、半導体製造装置への新たな資金投入にあるのかもしれません。半導体パッケージング、レーザー、計測など、古典的な半導体産業で使用されることを想定した新しいツールが開発された場合、量子プロセッサーやその運用に再利用する方法が考えられます。


そのため、2022年CHIPS・科学法の結果、米国の量子産業がどれだけの恩恵を受けるか、それを正確に図ることはできませんが、今後5年間でかなりのプラスの影響を及ぼすと予想されます。本法案の詳細については、ホワイトハウスが提供するファクトシートセクションごとの概要はこちら全文はこちらをご覧ください。