2022年5月の研究論文・ハードウェア編

日付:2022-06-14 提供:Quantum Computing Report 翻訳:Hideki Hayashi

By Dr. Chris Mansell


Hardware


Title (1): Ytterbium Nuclear-Spin Qubits in an Optical Tweezer Array(光ピンセットアレイにおけるイッテルビウム核スピン量子ビットの観測)

Organizations (1): JILA; University of Colorado; National Institute of Standards and Technology

Link (1): https://journals.aps.org/prx/abstract/10.1103/PhysRevX.12.021027


Title (2): Universal Gate Operations on Nuclear Spin Qubits in an Optical Tweezer Array of 171-Yb Atoms(171-Yb原子の光ピンセットアレイによる核スピン量子ビットのユニバーサルゲート操作)

Organization (2): Princeton University

Link (2): https://journals.aps.org/prx/abstract/10.1103/PhysRevX.12.021028


 冷却原子の量子情報実験の多くは、エネルギー準位構造が比較的単純なアルカリ原子を使用している。原子の量子状態を忠実に操作できるようになった今、より豊かで複雑なエネルギー準位構造をもつ原子の利点を探る時が来たようだ。そこで、2つの研究グループからイッテルビウム171を用いた実験が報告された。最初の論文では、光トラップへの原子のロードについて、記録的な効率の良さを示している。2つ目の論文では、アルカリ金属よりも2〜3桁長い時間、原子のコヒーレントを維持する新しい「魔法の」トラップ波長の詳細が述べられいる。この結果は、イッテルビウム171原子の再構成可能なアレイが、高速で高忠実度の1量子ビット論理ゲートを適用できる非常に有望な量子ビットシステムであることを示しているが、2量子ビットゲートの改善にはさらなる研究が必要である。



Title: Assembly and coherent control of a register of nuclear spin qubits

Organization: Atom Computing, Inc.

Link: https://www.nature.com/articles/s41467-022-29977-z


 冷却原子プロセッサーのさらなる成果として、Sr-87原子の組み立てとコヒーレント制御に関する最近の研究があげられる。このストロンチウムの同位体は原子時計に使われており、2つの価電子と非ゼロの核スピンを持つことから、有効な量子プロセッサーとなる可能性がある。研究者たちは、「Phoenix」と名付けた個別アドレス指定可能なシステムのコヒーレンス時間内に10^5回の演算を実行した。このコヒーレンス時間とゲート時間の比は、イオントラップ型量子コンピュータほどではないが、固体プラットフォームで見られるものよりも優れている。磁気シールド、ダイナミックデカップリング、複合パルス、パルス形状の最適化なども行わず、達成された成果である。これらの技術を加えることで、デコヒーレンスが発生する前に10^8ゲートを可能にすることができると見積もっている。



Title: High-fidelity three-qubit iToffoli gate for fixed-frequency superconducting qubits(固定周波数超伝導量子ビットのための高忠実度3量子ビットiToffoliゲート)

Organizations: Lawrence Berkeley National Laboratory; University of California, Berkeley

Link: https://www.nature.com/articles/s41567-022-01590-3


 Toffoliゲートは、アダマールゲートと組み合わせて量子計算に普遍的なControlled-Controlled-NOT演算を実装している。Toffoliのような多ビットゲートの重要な利点の1つは、量子回路の総ゲート数を減らすことができる点だ。一般に、最も単純な物理機構で実装されたゲートは、最も忠実度が高く有用である。今回の超電導プロセッサの研究では、サイクルベンチマークを行い、1ステップの「iToffoli」ゲート方式が、従来の3量子ビット超電導ゲートよりも98%強高いプロセス忠実度を持つことを発見した。この忠実度は、デコヒーレンスの主な原因として特定された、ZZ相互作用を抑制するさまざまな技術を研究することにより、さらに高めることができるだろう。特筆すべきは、このゲートをクラウド経由でアクセス可能な商用量子チップに容易に適用できることである。



Title (1): Intracavity Rydberg Superatom for Optical Quantum Engineering: Coherent Control, Single-Shot Detection, and Optical π Phase Shift

Organizations (1): PSL University; Sorbonne Université

Link (1): https://journals.aps.org/prx/abstract/10.1103/PhysRevX.12.021034


Title (2): Quantum-Logic Gate between Two Optical Photons with an Average Efficiency above 40%

Organization (2): Max-Planck-Institut für Quantenoptik

Link (2): https://journals.aps.org/prx/abstract/10.1103/PhysRevX.12.021035


 2光子量子論理ゲートの効率は、制御光子とターゲット光子のいずれもが手続き中に失われない確率を意味する。この効率性の記録は、2003年以降、11%で推移している。これを改善するために、光キャビティや冷却原子の集団励起が試みられてきた。これらのアプローチを組み合わせても、これまでは記録を更新することはできなかった。しかし、今月に入り、2つのグループが40%以上の効率化を達成している。また、ターゲットとなる光子の位相を最大180度まで操作することができ、非破壊でのシステムの状態を95%の忠実度で一発決定することができた。これにより2量子ビットや多量子ビットの論理ゲートとしての機能を最適化する、量子通信ネットワーク用の量子中継器の開発、マイクロ波と光領域の間で光子をコヒーレントに変換して超伝導体と冷却原子が互いにインターフェースできるようにするなど、多くの可能性があるので、次のステップに進むのはとても期待が大きい。



Title: Qubit teleportation between non-neighbouring nodes in a quantum network(量子ネットワークにおける非近接ノード間の量子ビットテレポーテーション)

Organizations: QuTech and Kavli Institute of Nanoscience, Delft University of Technology

Link: https://www.nature.com/articles/s41586-022-04697-y


 この論文では、量子ネットワークに関して、遠隔地にある非近接ノード間の量子テレポーテーションを実現した方法について述べられている。このネットワークは、固体スピン量子ビットをベースに、光学的に接続された3つのノードを使用したものだ。テレポーターは、2つのリンクで遠隔エンタングルメントを確立し、その後、中間ノードでエンタングルメントのスワッピング、そしてメモリ量子ビットに格納することで準備される。彼らは、テレポーターの準備が成功したことを告げると、任意の量子ビット状態を古典的な境界を超える忠実度で、単位効率でもテレポートできることを実証した。これらの結果は、量子ビットの読み出し手順、エンタングルメント生成中のアクティブメモリ量子ビット保護、遠隔エンタングルメントの不実性を低減するテーラードヘラルディング、などの主要な革新技術によって実現された。