2022年6月の研究論文・ソフトウェア編

日付:2022-07-21 提供:Quantum Computing Report 翻訳:Hideki Hayashi


By Dr. Chris Mansell



【 Software 】



Title: Computational advantage of quantum random sampling(量子ランダムサンプリングの計算上の優位性

Organizations: NIST and University of Maryland; Freie Universität Berlin; Helmholtz-Zentrum Berlin für Materialien und Energie; Fraunhofer Heinrich Hertz Institute


 量子力学では、測定は確率的なものだ。例えるなら、右上を向いている矢印を考えてみてほしい。矢印はどこを指しているかと聞かれますが、一言しか答えることができないとする。コインを振って、その結果で "上 "か "右 "のどちらかを答えればいい。同じ矢について何度も同じ質問をする人は、やがてあなたの答えから、その矢が斜めに向いていることを推測できるようになるだろう。量子ランダムサンプリングは、量子ビットを測定する前に、どの量子論理ゲートを実装するかを決めるために乱数発生器を使用するが、さらなるランダム性を伴う非常に重要なタイプの実験だ。研究者たちは、この実験を古典的なコンピュータで効率的にシミュレートできるかどうかを調べている。新しい総説は、急速に発展するこの研究分野を明確に要約し、今後の展開について魅力的な見解を示している。

Link: https://arxiv.org/abs/2206.04079



Title: Computational Advantage from a Quantum Superposition of Qubit Gate Orders(量子ゲートオーダーの量子重ね合わせによる計算の優位性

Organizations: University of Vienna; Institute for Quantum Optics and Quantum Information


 通常の量子アルゴリズムでは、論理ゲートは決まった順番で作用していく。しかし、ゲートを適用する順番は、量子系の状態によって制御でき、この量子系は量子重ね合わせの状態になることができる。そのため、異なる順序の重ね合わせでゲートを適用することが可能だ。通信タスクの場合、因果関係の順序が不定な量子プロトコルは、指数関数的な優位性をもたらすことができる。しかし、計算に関しては、ハダマドの約束問題と呼ばれる課題は、回路内に特定の数のゲートがなければ解くことができず、ゲートの順序を重ねることによる改善効果はかなり小さい。今回の研究では、これらの問題を拡張し、任意の数のゲートを持つことができるようにした。重要なのは、この拡張には高次元系ではなく、量子ビットが必要なことで、実験的な実証を行えるということだ。

Link: https://journals.aps.org/prl/abstract/10.1103/PhysRevLett.128.230503



Title: One bound to rule them all: from Adiabatic to Zeno(すべてを支配する一つの縛り :from Adiabatic to Zeno)

Organizations: Macquarie University; Università di Bari; Istituto Nazionale di Fisica Nucleare; Università di Trieste; Institut für Theoretische Physik, Tübingen; Waseda University


 近似は物理学にとって不可欠であり、その限界を理解することは、正しい使い方をする上で極めて重要である。この論文では、複雑なハミルトニアンをより単純なもので近似しても、量子系が非常によく似た時間発展を遂げるという、極めて一般的な状況を扱う。例えば、回転波近似は、原子から超伝導体までの様々な物理的量子ビットが、時間の関数としてどのように振る舞うかを分析するために使用される。非線形力学系の理論では、RWAが現実とどの程度一致するかについて厳密な境界が設けられている。この論文の著者らは、標準的な導出の主要な考え方を踏襲しつつ、量子力学が線形理論であることを利用して、改善された境界を導出している。この結果は、フォールトトレラント量子計算だけでなく、断熱的量子計算や量子シミュレーションの分野でも、より高い精度を求める量子技術関係者にとって重要だろう。

Link: https://quantum-journal.org/papers/q-2022-06-14-737/



Title: Quantum advantage in learning from experiments(実験から学ぶ量子優位性

Organizations: Caltech; Harvard; Berkeley; Microsoft


 量子テクノロジーは、物理世界を知るための実験データの取得・処理方法を大きく変える可能性を秘めている。物理システムから安定した量子メモリにデータを転送し、そのデータを量子コンピュータで処理する実験装置は、物理システムを測定し、その結果を古典コンピュータで処理する従来の実験よりも大きな利点を持つ可能性があるためだ。この論文では、様々なタスクにおいて、量子マシンが従来の実験に比べ指数関数的に少ない実験回数で学習できることを証明している。この指数関数的な利点は、物理システムの特性を予測する場合や、ノイズの多い状態に対して量子主成分分析を行う時など、物理ダイナミクスの近似モデルを学習する場合などに発揮される。例えば、2つの系のコピーを処理するだけで、多くの非共変観測量を同時に学習することが可能であるなど、指数関数的な優位性を得るために必要な量子処理はごくわずかである。本研究では、最大40個の超伝導量子ビットと1,300個の量子ゲートを用いた実験を行い、現在の比較的ノイズの少ない量子プロセッサーを用いて、大幅な量子的優位性を実現できることを実証した。この結果は、量子技術が自然を知るための強力な新手段を可能にすることを強調するものだ。

Link: https://ai.googleblog.com/2022/06/quantum-advantage-in-learning-from.html