2022年2月の研究論文・ハードウェア編

日付:2022-03-04 提供:Quantum Computing Report 翻訳:Hideki Hayashi

By Dr. Chris Mansell


過去1ヶ月間に発表された量子コンピューティングと量子通信に関して、興味深い研究論文の概要を紹介する。



【 Hardware 】

Title: Significant loophole-free test of Kochen-Specker contextuality using two species of atomic ions(2種の原子イオンを用いたコッヘン・シュペッカー文脈性の有意な抜け穴のないテスト)

Organizations: Tsinghua University; Southern University of Science and Technology; Duke University; California Institute of Technology; Beijing Academy of Quantum Information Sciences; Universidad de Sevilla


コッヘン・シュペッカー(Kochen-Specker)定理は、量子力学の予言と一致する隠れ変数理論の種類を限定している。より具体的には、隠れた変数が、測定過程の文脈に依存しないような理論は除外している。ベルの定理が、量子物理学の局所的な説明を否定したことと同じようなものだ。これまでも、さまざまな実験が文脈性を調査してきたが、すべて抜け穴が存在した。今回の報告は、この定理を初めて確定的に確認したものだ。100%の効率で測定できるイッテルビウムイオンとバリウムイオンをトラップして実験を行った。つまり実験全体を通して、測定に失敗することはなかったのである。この研究は実用的なものだろう。なぜなら、非文脈性を実証することは、量子コンピュータの認証に役立つからである。


Link: https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.abk1660



Title: Quantum Optimization of Maximum Independent Set using Rydberg Atom Arrays(リュードベリ原子配列による最大独立集合の量子的最適化)

Organizations: Harvard University; QuEra Computing; University of Waterloo; Perimeter Institute for Theoretical Physics; Google; Massachusetts Institute of Technology; Institute for Advanced Study; California Institute of Technology; University of Innsbruck; Austrian Academy of Sciences


この印象的な実験研究では、39個から289個の超低温ルビジウム原子を光ピンセットで捕獲し、グラフと呼ばれるノードとエッジの集合を表現する様々な二次元配置を実施した。グラフ理論における重要な問題は、最大独立集合(MIS)と呼ばれる抽象的でいて応用範囲の広いものだ。目標は、互いにエッジで結ばれていない頂点の最大の部分集合を見つけることだ。近くにある原子をリュードベリ状態と呼ばれる主量子数の多い状態に励起すると、リュードベリ遮断現象が起こる。この手順の最後に、系の基底状態がMIS問題の回を内包しているのだ。注目すべき結果は、古典的な解法が最も困難とするグラフに対して得られたものであった。量子的なアプローチで競争力を高めるには、原子のコヒーレンス時間を長くし、システムサイズを大きくする必要がある。


Link: https://arxiv.org/abs/2202.09372



Title (1): Resource-Efficient Dissipative Entanglement of Two Trapped-Ion Qubits(2つのトラップドイオン量子ビットのリソース効率の良い散逸的エンタングルメント)

Organizations (1): National Institute of Standards and Technology; University of Colorado; Universität Kassel; ETH Zürich; Freie Universität Berlin

Link (1): https://journals.aps.org/prl/abstract/10.1103/PhysRevLett.128.080502


Title (2): Generation of a Maximally Entangled State Using Collective Optical Pumping(光ポンピングによる最大エンタングル状態の生成)

Organization (2): ETH Zürich

Link (2): https://journals.aps.org/prl/abstract/10.1103/PhysRevLett.128.080503


非古典的な状態は、ユニタリー変換を用いるか、工学的散逸動力学により作り出すことができる。後者のアプローチは、さまざまなプロトコルが提案され、実装されている。その利点は、変動する制御フィールドなど実験の不完全性に対して、より堅牢であることだ。この2つの論文では、散逸を利用して、捕捉されたイオンのもつれ合うペアを作り出している。忠実度は、2つのカルシウムイオンで93%、2つのベリリウムイオンで95%と報告されている。どちらの研究者も、標準的な改良をセットアップに加えれば、さらに忠実度は上がると考えている。今回実証されたプロトコルは、NVセンター、中性原子、超伝導体など、他のタイプの量子ハードウェアに適用できる可能もある。