2022年2月の研究論文・ソフトウェア編

日付:2022-03-01 提供:Quantum Computing Report 翻訳:Hideki Hayashi

By Dr. Chris Mansell


過去1ヶ月間に発表された量子コンピューティングと量子通信に関して、興味深い研究論文の概要を紹介する。


【 Software 】

Title: The boundary for quantum advantage in Gaussian boson sampling(ガウス粒子サンプリングにおける量子優位性の境界)


Organizations: University of Bristol; Imperial College London; Hewlett Packard


先月は、ガウスボソンサンプリング(GBS)プロトコルに関して、少なくとも2つの注目すべき論文が発表された。


ある研究者は、古典的なシミュレーションをより早く行う方法を発見した。別の研究者は、量子プロトコルをより強固にし、古典的なシミュレーションの影響を受けにくくするためにゴールポストを効果的に移動させることに真剣だった。新しい結果が未だ次から次へと発表されている。今回、古典コンピュータでは、シミュレーションに6億年かかると思われたGBS実験が、わずか73日でシミュレーションできるようになった。これは30億分の1の速さだ。GBSの研究には、いくつかの有用な応用があり、その重要性は、量子技術産業全体の先行指標として機能することにある。もし、量子実験が、他の方法では得られないような結果を導き出せるとしたら、そこには大きな価値があり、量子デバイスが世の中に実用的な影響を与え始めるまで、そう遠くないかもしれないからだ。


Link: https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.abl9236



Title: A quantum-inspired approach to exploit turbulence structures(量子的アプローチによる乱流構造の利用)


Organizations: University of Oxford; Cambridge Quantum Computing Limited; University of Bath; University of Pittsburgh; National University of Singapore; Universität Hamburg


乱流は、走行中の車の上を空気が流れる時、血液が体内を流れる時、工業用流体がパイプを通過する時に発生する、不規則に変動する流れのことだ。乱流は、あたかも量子テクノロジーにおけるデコヒーレンスのように、制御された核融合にとって災いの種となる。先日、核融合発電所から取り出されるエネルギー量の世界新記録が達成された。その研究者たちは、量子多体系物理学のツールを使用し、新たな方法で乱流を分析したのだ。彼らは、このアルゴリズムを古典コンピュータで実行し、直接数値シミュレーションよりも優れた効率を示した後、量子コンピュータでさらに高速に実行できる方法を示した。商用核融合という野心的な目標だけでなく、乱流のモデル化方法の改善は、それが問題となる多くの産業に貢献する可能性がある。


Link: https://www.nature.com/articles/s43588-021-00181-1



Title: Quantum algorithm for credit valuation adjustments(信用評価調整のための量子アルゴリズム)

Organizations: Zapata Computing; BBVA Corporate & Investment Banking; IBM


信用評価調整額(CVA)は、銀行が法的に実施を義務付けられている計算コストのかかるシミュレーションである。カウンターパーティーのデフォルトリスクを統計的に分析するために、多くの経路をサンプリングしなければならない。大不況を招くような事態を回避するためである。本研究は、CVAを計算するために柔軟な量子アルゴリズムを開発し、回路の深さを低く抑えるために可能な方法を特定している。また具体的な実装にも踏み込み、その詳細についても説明されている。量子的なアプローチが金融業界において活躍するには、さらなる発展が必要だが、活発な研究分野であり、近いうちにさらなる成果が得られそうだ。


Link: https://iopscience.iop.org/article/10.1088/1367-2630/ac5003



Title: Noisy intermediate-scale quantum (NISQ) algorithms

Organizations: National University of Singapore; University of Toronto; Imperial College; Harvard University; Massachusetts Institute of Technology; CNRS-UNS-NUS-NTU International Joint Research Unit; Nanyang Technological University; Vector Institute for Artificial Intelligence; Canadian Institute for Advanced Research


このレビュー論文の目的は、NISQ時代に重要な結果をもたらす可能性のあるさまざまなアルゴリズムについて説明することである。変分量子アルゴリズムに加え、ハイブリッドアプローチ、さらにアナログアプローチから着想を得たアルゴリズムも取り上げている。そしてその過程において、アルゴリズムが直面する理論的・実験的な課題を指摘している。調査では、機械学習、最適化、科学などの分野で、現在検討されている誇大な数のアプリケーションについて論じたものだ。さらには、量子プロセッサの性能を比較する方法や、オープンソースの量子ソフトウェアツールのリストも紹介されている。最後に、NISQ研究の近い将来の目標と、フォールトトレランスの実現に向けた長期的な展望について、思慮深く徹底して評価している。


Link: https://journals.aps.org/rmp/abstract/10.1103/RevModPhys.94.015004