コラム:量子機械学習の期待と挑戦

日付:2022-01-17 提供:Quantum Computing Report 翻訳:Hideki Hayashi

By Yuval Boger, Chief Marketing Officer, Classiq Technologies量子コンピューティングの最近の進歩 - Googleの量子超越実験から一般市場への進出、製品ロードマップの発表に至るまで - 機械学習のまわりでは、正当な期待や興奮と、過剰な誇大広告の両方が発生している。さて、量子コンピュータはQML(量子機械学習)革命を起こすのだろうか?それはいつなのか?その日のために、先見性のある経営者は責任を持って計画を立てるべきなのだろうか?量子コンピュータは、通常のビットの代わりに量子ビットを使用し、データサイエンティストが、量子ビットの2つの本質的でユニークな機能(重ね合わせとエンタングルメント)を利用したアルゴリズムを使用した場合、AI/MLアルゴリズムは劇的なスピードアップと新たな知見を見出すことができる可能性がある。機会学習において、量子コンピュータを利用する主な動機は4つ考えられる。量子と古典の間には、ヒューリスティックに違いがある。古典的な機械学習アルゴリズムの多くは、理論的な証明がない。経験的に機能するにしても、そのヒューリスティックが期待に応えられない時、量子ヒューリスティックを試したくなるだろう。量子コンピュータは、データを指数関数的に(コンパクトに)読み込むことができる。量子コンピュータの重ね合わせという属性は、複数の値を同時に保持しながら、それぞれの値に異なる重みを与えることを可能にする。例えば50量子ビットの量子コンピュータは、1兆以上の値を同時に保持し処理することができる。一方古典コンピュータは一度に処理できる値は1つだけである。ちなみにだが、1兆は体内にある赤血球の数のちょうど50倍だ。機械学習の課題の多くは多次元空間を利用することにあって、古典コンピュータではモデル化できないものが多くある。多次元の空間をモデル化することは量子コンピュータには容易であり、実際にあり得るのだ。連立方程式の解法が指数関数的に加速されることが証明されている。具体例として、HHL(Harrow, Hassidim, Lloyd)アルゴリズムにより、量子コンピュータはこの系(最小二乗直線回帰やガウス過程などで広く用いられる)を、古典コンピュータに比べ指数関数的に速く解くことが証明されている。もちろん量子アルゴリズム毎に高速化は異なる。例えば、Groverのアルゴリズムは、構造化されていないデータセットを効率的に検索する。古典の検索では、あるデータセットに対してある時間で検索を完了する場合、データセットのサイズが4倍になればその時間は4倍になる。対して、グローバー検索では、4倍のサイズの検索時間は2倍にしかならない。量子コンピュータは新しいタイプのデータパターンを生成する。リバースアルゴリズムを使用することで、様々なパターンを特定することが期待できる。 しかし、このような刺激的な期待と同時に、管理者は量子コンピューティングの現実と現在の限界を認識しておく必要があるだろう。現在のコンピュータは、限られた数の量子ビットしか持っていない。量子ビットの数は、量子コンピュータの能力を測る唯一の尺度ではないが(他の重要な尺度には、コヒーレンス時間、量子ビットの忠実度、接続性などがある)、第一近似値として有効なものだ。自動車の加速性や牽引力の近似値として馬力を用いるのと同じようなものである。21年11月時点で発表されている最大の量子コンピュータは127量子ビットであり、その結果、現在量子コンピュータで実行可能なアルゴリズムは、実質的に古典コンピュータでも実行可能となっている。しかし、IBMやHoneywell、その他多くの企業の製品ロードマップでは、今後数年間で数百、数千の量子ビットが予測されており、量子コンピュータに有利な性能差が大きくなっていく。プログラミングは難しい。量子プログラミングには、従来のプログラミングとは異なる思考が必要になる。現在、ほとんどの量子開発環境はゲートレベルで動作していて、プログラマーは量子ビットとその動作を実行する量子ゲート間の「配線」をほぼ手作業で指定する必要があるのだ。これは数個の量子ビットに対しては実用的なアプローチだが、数十万の量子ビットに対してはまったくスケールしない。幸い、より高度な抽象化をプラットフォームが登場し、機械学習エンジニアが求める機能を高いレベルで指定し、それをもとにコンピュータプログラムに量子回路を合成させることが可能になりつつある。人材が不足している。現在の量子プログラミング環境の多くは、量子情報科学に関する博士号レベルの知識が前提である。大学では量子工学の教育カリキュラムが充実していますが、経験豊富な量子工学のソフトウェアエンジニアは少ない。アウトソーシングの選択肢もあるが、多くの企業では、量子技術は戦略的であり、社内でコンピテンシーを高めることに重きを置いている。また、新しい開発プラットフォームにより、量子物理学の深い理解を必要としないドメイン固有の専門家(金融、物流、材料科学、そしてもちろん機械学習の専門家など)が、より量子にアクセスする要望を持っている。メーカーが異なる量子コンピュータには互換性がない。IT管理者は、HPのサーバで動作するコードはDellのサーバでも動作すると考えて支障はないが、量子は違う。メーカーが異なるコンピュータは、アーキテクチャも違えば、量子ゲート(命令セットのようなもの)も異なるなど、様々な違いがあるのだ。顧客からは、「ハードウェア競争では誰が勝者になるのか分からないし、まだ1つのベンダーにコミットする時期ではない」という声がよく聞かれる。そのため、あるコンピュータから別のコンピュータにアルゴリズムを簡単に移植でき、どのようなコンピュータがその仕事に適しているかを事前に予測できるような開発プラットフォームが求められるのは当然だろう。量子クラウドプロバイダー(Amazon Braket や Azure Quantum など)は、複数の種類の量子コンピュータを扱っており、実験が容易なため、企業では利用を希望するケースが多くなっている。つまり、量子コンピュータがビジネスに戦略的なインパクトを与えるであろうことは理解しているが、その実現にはまだ2,3年必要だろうと考えている、ということだ。しかしながら、企業は今こそ量子の世界への第一歩を踏み出し、社内の専門知識を高め、初期のユースケースを特定し、短い概念実証を行うべきであると勧めたい。これは、ハードウェアとソフトウェアが、量子の大きな期待に応えたとき、量子機械学習をマスターした企業に遅れを取らないようにするためである。(翻訳:Hideki Hayashi)提供:Quantum Computing Report