コラム:2022年の展望 量子ハードウェア ⑥ イオントラップ AQT、Quantinuum(Honeywell)、Universal Quantum、Oxford Ionics、etc..

日付:2021-12-26 提供:Quantum Computing Report 翻訳:Hideki Hayashi

By David Shaw, 「Fact Based Insight」この記事の原文は、「Fact Based Insight」のウェブサイトからで、許可を得て再掲載しています。原文はこちらから。2022年の展望 量子ハードウェア ① 概要 2022年の展望 量子ハードウェア ② 超伝導 IBM2022年の展望 量子ハードウェア ③ 超伝導 Google2022年の展望 量子ハードウェア ④ 超伝導 USTC,Rigetti,D-WAVE etc... 2022年の展望 量子ハードウェア ⑤ イオントラップ IonQ 【 AQTは、リアルにラックシステムを実証した 】AQTは、イオントラップ型の開発をおこなっているが、光学量子ビットに基づくスタートアップだ(IonQやHoneywellが使用する超微細遷移ではなく、光学遷移に基づいている)。コヒーレンス時間は多少短くなるが、今後統合されていく光学システムとの相性の良さが期待できる。同社はEUのQT(量子技術)推進プロジェクトであるAQTION(Advanced Quantum computing with Trapped IONs)に参加していて、世界初となる24Qフルラックマウントの実証機を開発している(今日の世界最小QC)。[31]EQTC 2021で発表された作品では、AQTIONとインスブルック大学のチームが、フォールトトレラント・ゲート(1Qゲート、2Qゲート、magic state生成)の汎用セットを実演した。世界初の実演となったが、これは16QのAQTパイン・トラップデバイスの使用で、2つの量子論理ビット(それぞれスティーン・コードと呼ばれる7Qカラー・コードを使用)を実装している。Thomas Monz氏は、インスブルック大学チームを率い、ATQの共同設立者でもある。 この結果がピアレビューに耐えるようなことになれば,欧州にとって重要な勝利となる[32].このパイン・トラップが実証した2Qの忠実度は99.36%だ[31]。最重要な課題はこれを向上させることだろう。ーーーーーーーーーーーーーー
- Light-Shift 2Q gate

ジョージア工科大学の研究によると、レーザー駆動2Qゲートの新しいメカニズムには利点があるという。原理的には、超微細・光学的どちらの量子ビットにも適用できる。最近の研究でこの方法は、光トラップされたイオン量子ビットを用いて、ゲートの忠実度を99.99%まで保つようサポート可能であると論じている。
ーーーーーーーーーーーーーー【 HoneywellはQuantinuumとなって、突き進む 】Honeywellは、つい先日、量子コンピューティング部門を分離して、Cambridge Quantum(量子ソフトウェアの世界的リーダー)と合併し、Quantinuumを設立した。企業行動としてとても大きな決断だ。有力なソフトウェアのノウハウに直接アクセスできることは、初期デバイスの活用にとって重要な差別化要因となるだろう。この合併による強力な資本金、Honeywellの製造施設へのアクセス、新会社の社長兼COOであるTony Uttley氏の続投、これらによりハードウェア開発の継続性が担保されている。[33; 34]Honyewellは、ロードマップを体系的に進めていく能力を示し続けている。2021年は1024QVに初めて到達し記録を更新した。現在は毎年「桁違い」の増加を目標としている。また、同社の予備結果では、10Qデバイス([[7,1,3]]カラーコードを使用)内で、複数ラウンドの誤り訂正に成功したことが示されている。これは、ミッドサーキットの測定でリードしていることを利用して、効率的に複数ラウンドの誤り訂正を繰り返すことができるようになったことに由来する。倫理的忠実度は物理的忠実より高くなっている(論理的SPAM 99.83(2)% vs 物理的SPAM 99.76(8)%)。Honeywellの研究における詳細なエラー解析は、「誤り訂正」に不必要に執着し立ち止まるのではなく、根本的な物理エラー率を理解することによる改善の必要性も促している。多くの参入企業も、まもなくこの課題に直面するだろう。ーーーーーーーーーーーーーー
- Honeywell roadmap
H1 (linear trap),
H2 (racetrack layout),
H3 (grid layout),
H4 (integrated optics),
H5 (large scale via tiling);
by 2030.
ーーーーーーーーーーーーーー同じイオントラップ型でもHoneywellでは、IonQやAQTとは異なるアプローチがとられている。イオンの直鎖(a linear chain)操作を行うのではなく、QCCDグリッドの中でイオンをシャッフルする。2021年他の企業は、このタイプのアーキテクチャには新しい可能性がある、と興味を示している。【 相互接続の革新 】Universal Quantum社は、QCCDの手法を用いたイオントラップのスタートアップだ。従来の疑問として、大規模なイオントラップ型のアーキテクチャは、実現可能なシングル・トラップを構築後どうするのか?という点にある。このことは、小規模なNISQアプリケーションには充分かもしれない。しかし、FTQCに必要とされる100万量子ビットデバイスには心もとない。Universalは、この問題に対する新しい解決策として、モジュール間イオンの直接移動を提案している。ーーーーーーーーーーーーーー
- Photonic Interconnects
モジュール間をコヒーレントを保って接続するための標準的な手法は、フォトニック・インターコネクトを使用することだ。実際、支持者はこのソリューションの柔軟性をイオントラップ型のアーキテクチャ全体の長所として語っている。しかしこの手法でこれまでに実証された速度はそこそこである(エンタングルメントレートは182/秒、忠実度は94%[36]であり、もしあなたが十分に年を取っているなら、悪い回線の320ボード・モデムを介してインターネットにアクセスしようとしたことを覚えているかもしれない)。

ECTI 2021では、Universalとサセックス大学のチームが、マイクロ配列の量子モジュール境界をまたぐ「全電気」イオン移送の魅力的な概念実証を発表した。これは、レートの大幅な改善と驚くべき転送の忠実度(1秒間に2400回、99.999995%[37]-あなたが十分に古い人なら、2400ボードが、320よりも優れていたことを覚えているでしょう)を提供するものだ!
ーーーーーーーーーーーーーー直接移送(Direct transport)は、フォトニック・リンクほど柔軟ではないが、誤り訂正のニーズと組み合わせることが可能なツールだ。またフォトニック・インターコネクトの速度が大幅に向上すると指摘もされている。Entangled Networks社は、この技術に特化したカナダのスタートアップだ。CEOのAharon Brodutch氏は、想定レート1,000/1sの速度も射程圏内であると語る。【 ゲートの革新 】Universalもイオントラップ型のプレイヤーだが、IonQ、AQT、Honeywellのようにレーザーを使用して直接ゲート駆動することのスケーラビリティに疑問を投げかけている。彼らはマイクロ波フィールドでゲート駆動することを追及している。今のところ、多数のイオンに対して充分なゲート忠実度が持続される場合には、スケーリング上で利点をもたらすことがわかっている。2021年も同社は、UKRIからの追加助成金を獲得している。プロジェクトの一つは、商用アプリケーション向けに誤り訂正型のプロセッサ開発をサポートし、二つ目は大手半導体メーカーとマイクロチップを共同開発する。Oxford Ionics社は、近接場マイクロ波によるゲート駆動というまったく新しいアプローチをとるスタートアップだ。英国のQCS(Quantum Computing & Simulation Hub)から誕生したこの企業は、最近になり一連のUKRI助成金の恩恵を受けていて、2021年さらに3つの助成金を獲得予定だ。ーーーーーーーーーーーーーー
-Beyond 99.99%
Oxford Ionicsの共同設立者であるTom Harty氏は、イオントラップが99.99%の忠実度をはるかに超えて、超電導量子ビットとの間に、清々しい川の流れを取り戻す可能性を強く訴えている。その中核となるのは、この技術プラットフォームにおいて、現代の半導体製造技術の再現性と、自然な量子ビットシステムという私たちの最も強力な2つの長所を組み合わせることができると。自然な量子ビットシステムとは、人類がこれまで作った中で最も精密な装置である原子時計の心臓部にあるのと同じものだ。

同社は、システムの古典的な側面(冷却と読み出し)を制御するためにのみレーザーを使用している。Harty氏は、マイクロ波で繊細な量子ゲートを駆動する利点を述べている。「位相の感度は、レーザーシステムにみられるTHzではなく、MHzで扱うほうが簡単である」と。またマイクロ波は、レーザー駆動ゲートが99.99%を超えることを難しくしている理由の「photon scattering limit(光子散乱限界)」を、超える手法となる可能性がある[38; 39]。
ーーーーーーーーーーーーーーOxford Ionicsは、NISQとFTQCのロードマップをそれぞれ発表すると考えられる。もし充分に高い2Qの忠実度が達成できるのであれば、誤り訂正を待つ必要はないでしょう。99.99%の2Q忠実度があれば、100AQのデバイスが出来るかもしれない、そしてそのことは胸を躍らせる。References[31] I. Pogorelov et al., “A compact ion-trap quantum computing demonstrator,” PRX Quantum, vol. 2, no. 2, p. 020343, Jun. 2021, doi: 10.1103/PRXQuantum.2.020343. [Online]. Available: http://arxiv.org/abs/2101.11390. [Accessed: 17-Nov-2021][32] L. Postler et al., “Demonstration of fault-tolerant universal quantum gate operations,” arXiv:2111.12654 [quant-ph], Nov. 2021 [Online]. Available: http://arxiv.org/abs/2111.12654. [Accessed: 02-Dec-2021][33] “Honeywell Quantum Solutions And Cambridge Quantum Computing Will Combine To Form World’s Largest, Most Advanced Quantum Business.” [Online]. Available: https://www.honeywell.com/us/en/press/2021/06/honeywell-quantum-solutions-and-cambridge-quantum-computing-will-combine-to-form-worlds-largest-most-advanced-quantum-business. [Accessed: 06-Oct-2021][34] “Quantinuum,” Cambridge Quantum, 30-Nov-2021. [Online]. Available: https://cambridgequantum.com/quantinuum/. [Accessed: 02-Dec-2021][35] C. Ryan-Anderson et al., “Realization of real-time fault-tolerant quantum error correction,” arXiv:2107.07505 [quant-ph], Jul. 2021 [Online]. Available: http://arxiv.org/abs/2107.07505. [Accessed: 13-Nov-2021][36] L. J. Stephenson et al., “High-rate, high-fidelity entanglement of qubits across an elementary quantum network,” Phys. Rev. Lett., vol. 124, no. 11, p. 110501, Mar. 2020, doi: 10.1103/PhysRevLett.124.110501. [Online]. Available: http://arxiv.org/abs/1911.10841. [Accessed: 01-Jul-2020][37] “European Conference on Trapped Ions | hybrid ECTI 2021,” Agenda (Indico). [Online]. Available: https://indico.fysik.su.se/event/6949/. [Accessed: 02-Dec-2021][38] R. Ozeri et al., “Errors in trapped-ion quantum gates due to spontaneous photon scattering,” Phys. Rev. A, vol. 75, no. 4, p. 042329, Apr. 2007, doi: 10.1103/PhysRevA.75.042329. [Online]. Available: http://arxiv.org/abs/quant-ph/0611048. [Accessed: 02-Dec-2021][39] C. R. Clark et al., “High-Fidelity Bell-State Preparation with $^{40}$Ca$^+$ Optical Qubits,” Phys. Rev. Lett., vol. 127, no. 13, p. 130505, Sep. 2021, doi: 10.1103/PhysRevLett.127.130505. [Online]. Available: http://arxiv.org/abs/2105.05828. [Accessed: 02-Dec-2021]⑦に続く(翻訳:Hideki Hayashi)提供:Quantum Computing Report